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著作権と引用-copyright-jp

著作権の基礎知識 |2020年04月14日

著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」のことをいい、著作者とは、「著作物を創作する者」のことをいいます。

著作権法で保護される著作物は、例示すると、小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物、音楽の著作物、舞踊又は無言劇の著作物、絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物、建築の著作物、地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物、映画の著作物、写真の著作物、プログラムの著作物、などになります。

著作権には、著作者の人格的権利を保護する著作者人格権と、著作物を利用する独占的権利である著作権とがあります。
それぞれの内容は以下の通りです。

著作者人格権

公表権(著作権法第18条)

著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの、著作者の同意を得ないで公表された著作物を公衆に提供し、または提示する権利を有しています。これが公表権です。
著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様です。
二次的著作物とは、たとえば書籍が原著作物であった場合に、これを映画化した映画などがこれにあたります。

氏名表示権(著作権法第19条)

著作者は、その著作物の原作品に、またはその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有しています。これが氏名表示権です。

その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供・提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、氏名表示権を有しています。

同一性保持権(著作権法第20条)

著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有しています。これが同一性保持権です。
著作者の意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けることは原則、あってはなりません。

著作権

複製権(著作権法第21条)

著作者は、その著作物を複製する権利を専有します。

上演権及び演奏権(著作権法第22条)

著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ、聞かせることを目的として(公に)上演し、または演奏する権利を専有します。

上映権(著作権法第22条の2)

著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有します。

公衆送信権等(著作権法第23条)

著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合には、送信可能化を含む)を行う権利を専有します。
また、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有します。

口述権(著作権法第24条)

著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有します。

展示権(著作権法第25条)

著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有します。

頒布権(著作権法第26条)

著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有します。
また著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有します。

譲渡権(著作権法第26条の2)

著作者は、その著作物(映画の著作物を除く)をその原作品または複製物の譲渡により公衆に提供する権利を専有します。
ただし、譲渡権を有する者またはその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物等による譲渡は可能です。

貸与権(著作権法第26条の3)

著作者は、その著作物(映画の著作物を除く)をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有します。

翻訳権、翻案権等(著作権法第27条)

著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、もしくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有します。

二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(著作権法第28条)

二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、上記核権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有します。


* 参考 著作権法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=345AC0000000048#130

著作権の制限

上記の各著作者の権利は、公益的な見地からまた社会政策的な観点から、制限される場合があります。
ただし著作者人格権は制限されません。
また、著作権の制限によって第三者が著作物の複製等の利用ができる場合でも、それぞれに一定の要件やルールがあります。無制限に利用ができるわけではありません。

よく知られているものとしては、著作物の正当な引用(著作権法第32条)のほか、私的使用のための複製(著作権法第30条)があります。
著作権の目的となっている著作物は、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)を目的とするときは、例外の場合を除き、その使用する者が複製することができます。

教育や報道、福祉などの社会政策的な目的から、著作権が制限される場合としては、図書館等における複製等(著作権法第31条)、教科用図書等への掲載(著作権法第33条)、教科用図書代替教材への掲載等(著作権法第33条の2)、教科用拡大図書等の作成のための複製等(著作権法第33条の3)、学校教育番組の放送等(著作権法第34条)、学校その他の教育機関における複製等(著作権法第35条)、試験問題としての複製等(著作権法第36条)などがあります。

また、視覚障害者等のための複製等(著作権法第37条)、聴覚障害者等のための複製等(著作権法第37条の2)などがあります。

さらに、時事問題に関する論説の転載等(著作権法第39条)、政治上の演説等の利用(著作権法第「40条)、時事の事件の報道のための利用(著作権法第41条)、裁判手続等における複製(著作権法第42条)などがあります。

裁判手続のために必要と認められる場合のほか、立法または行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、一定条件のもとに複製が認められます。
たとえば、行政庁の行う特許、意匠、商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価、国際出願に関する国際調査・国際予備審査に関する手続での複製があげられます。

さらに、プログラムやデータの利活用などが進む今日の社会政策的な理由から、「検討の過程における利用(著作権法第30条の3)が、一定条件のもとに認められます。
著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(著作権法第30条の4)では、著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合や、情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うこと)の用に供する場合などのほか、電子計算機による情報処理及びその結果の提供に付随する軽微利用等(著作権法第47条の5)などにも、一定条件のもとに利用が認められます。


* 参考 文化庁「著作権制度の概要」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/

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引用文献と引用の要件 |2020年03月10日

他の著作物を、必要な限りにおいて一部複製することを、引用(著作権法第32条)といいます。
引用の方法は、正当な範囲内で、同一性保持権を侵害せず、出所の表示をするなどのルールに従って行う必要があります。

出所の表示は、一般的には、著作者名、題号、掲載媒体名、出版社等、URLなどを明記することになりますが、記載方法に厳密なルールはありません。
ただし、学術論文などではこの他にも発行年月日、巻・号・ページ、その他の情報を掲載することが多く、一定の慣行があります。

学術論文における参考文献の記載方法の指針を定めたものが、「科学技術情報流通技術基準」(SIST)として取りまとめられています。

一方、このような引用文献のことを参考文献と称することもありますが、他の著作物を一部複製することはないが、内容を参照・参考にした場合に、参考文献ということもあり、本来は後者の意味合いであると考えられます。

「科学技術情報流通技術基準」(SIST)では、引用文献と参考文献とを区別せずに、参考文献として取り扱っています。
学術論文などでは、読者の便宜に資するほか、参考文献の著作者への敬意、さらに参考にした部分と独自の部分との区別をできるようにするため等の理由から、所定の方法で掲載することが公正な慣行であるといえます。

引用の要件

引用について、著作権法第32条では、下記のように規定されています。

「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」

「国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。」

出所の明示について、著作権法第48条では、下記のように規定されています。

「次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
 一 第三十二条(中略)の規定により著作物を複製する場合」

「前項の出所の明示に当たっては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。」

つまり、下記の要件を満たしている必要があります。

公開された著作物であること
引用の必然性(公正な慣行に合致していること)
区分明確性(引用文であることを明確に区別していること)
本文と引用部分の主従関係の明確性(引用の目的上、正当な範囲内であること)
出所の明示

たとえば、他の著作物中の写真や図表を転載してしまうことは、一般的に、上記の引用の正当な範囲を超えると考えられることが多く、複製権を侵害するおそれがあるため、著作権者の許諾が必要になります。
なお、類似の言葉として「転載」という言葉がありますが、著作権法では「複製」を意味し、引用の条件を満たさないものについては、著作権者の許諾が必要になります。
著作権者の許諾を得て掲載等する場合でも、出所の表示を行うことが公正な慣行であるといえます。

なお、複製をしていない場合であっても、元の著作物を参考にし、文章の流れや内容の展開など、全体的に同じような内容の著作物としてしまうと、翻案権の侵害となるおそれがあります。
詳しくは著作権者や専門家に確認をとったほうがよいケースもありますので、注意が必要です。


* 参考 「著作権」金原商標登録事務所
https://kanehara.com/copyright/

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■このページの著者:金原 正道

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