科学技術情報流通技術基準
抄録作成 解説
まえがき
- (1)本基準制定の経緯
- この基準は,最初1976年に,“抄録に関する基準案”として暫定案が作成され,その後,科学技術庁が実施したアンケートや普及説明会での意見を踏まえて,今回,章節の並べ換え及び内容細部の見直しを行ったものである。
- (2)本基準の目的
- 科学技術文献の急激な増加に伴って,必要な文献を探索することが難しくなってきた。このために抄録の重要性が増大している。抄録は情報流通の媒体として古い歴史をもっている。従来は主として第三者による抄録が利用されていたが,近年,一次文献に著者による抄録をつけることの必要性が強調されてきた。
著者抄録は,一次文献の読者の役に立つだけでなく,情報検索や二次文献作成のためにも利用できる。
本基準は,著者が抄録を作成する際の指針となるだけでなく,学術雑誌等の編集者や二次情報サービス機関の関係者が抄録を作る際の指針としても役立つことを目的としたものである。
- (3)抄録の目的とその利用
- 抄録は次のような目的に利用される。
- (a)原記事を読む必要性の判定
- 原記事の内容を迅速かつ的確に把握するのに役立つので,原記事に目を通す必要性の有無を判定する資料となる。
- (b)原文献に代わる情報の提供
- 関連分野の利用者は,抄録だけを読んで要点を得ようとする場合がある。
- (c)二次情報サービス機関における利用
- 二次情報サービス機関は,一次文献についている抄録をそのまま,あるいは加工して利用することがある。二次情報誌に掲載された抄録は,当該専門分野の読者はもちろんのこと,関連分野あるいは隔った分野の読者にも利用されることがある。抄録作成にあたっては,当該専門分野の読者に重点を置くが,周辺あるいは隔った分野の読者にも配慮した抄録が作成されることが望ましい。
- (d)情報検索における抄録の利用
- 抄録は,情報検索のための素材として利用される。
- (4)国際規格との関係
- 欧文抄録作成についての国際規格としては,ISO 214 Documentaion−Abstacts for publications and documentationがある。この基準は,同規格に近いが,抄録の長さの規定に差がある(解説3.3参照)。
- 1. 適用範囲
- 現在,特定機関で抄録作成に関する基準や手引を有する所もいくつかあるが,一般性のある基準はない。今後は本基準を指針とされたい。
- 2. 用語の意味
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| (1) | 抄録(abstracts)に類似の用語として次のものがある。
- (a)摘要(synopsis)
- 摘要は,論文その他の著作物の全内容を要約したもので,常にその文献に添付されるものである。通常,標題と本文との間におかれる。“摘要”という語は従来,著者によってつくられたものを指し,第三者によってつくられた“抄録”と区別していたが,この区別はもはや意味をもたなくなっている。
- (b)要約(summary)
- 顕著な新規性のある点や結論をその文献の中で再説するものである。要約には,原著の内容のうち.目的,方法などの要素は必ずしも含まれていない。この点で要約は抄録と同義ではない。
- (c)抜枠(extract)
- 原著から,原著全体を代表すると思われる部分を抜き書きしたものである。
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| (2) | 報知的抄録と指示的抄録のほかに報知的―指示的抄録(半報知的抄録ともいう)がある。
これは,抄録の長さの制限あるいは対象とする利用者への配慮から原記事の一部分を報知的に,その他の部分を指示的に記述したものである。 |
- 3. 抄録の要件
- 3.3 抄録の長さ
- 抄録の長さは,原記事の種類や学問・専門分野によって異なる。一般に報知的抄録は長く,指示的抄録は短い。
ISO 214では,250語以内(短報は100語以内)となっているが,本基準では,我が国の現状を考慮して,本文の通りの範囲を定めた。
- 3.4 抄録に使用する言語
- わが国で刊行される一次文献のうち,本文が和文であるものの抄録は,和文のみ,英文のみ及び和文と英文を併載したものがあるが,本文が欧文であるものの抄録は,英文のみであるものが圧倒的に多い。ここでは,国内の情報流通,国際的情報流通を考慮して和文と英文の両方の抄録を掲載することが望ましいとした。
- 4. 抄録の書き方
- 本項で示した抄録の書き方は,抄録作成上の一般的留意事項をまとめたものである。具体的な抄録記述に当っては,次のような既存の基準を参照することが望ましい。
| (1) | 常用漢字表,常用漢字別表,常用漢字字体表及び常用漢字音訓表の内閣訓令・告示 |
| (2) | 送り仮名の付け方の実施に関する内閣訓令・告示 |
| (3) | 現代仮名遣いの実施に関する内閣訓令・告示 |
| (4) | ローマ字のつづり方(内閣告示) |
| (5) | 外来語の表記について(報告):国語審議会 |
| (6) | 外国の地名・人名の書き方(案)(文部省) |
| (7) | 地名の呼び方と書き方(社会科手びき書)(文部省) |
- 4(4)極端な省略文体とは,“てにをは”を省略したり,動詞を語幹でとめたりする電報式文体などのことである。
- 5. 原記事の種類による抄録の特徴
- 5.1 原著論文
- 原著論文の抄録の記述は,普通に5.1(2)に示す標準的項目の順序に従うが,必要があれば重要な結果や結論をはじめに記述してもよい。
- 5.2 短報
- 短報には,研究速報,研究ノート,技術ノート,記事の補足・訂正等がある。従来は,短報には抄録をつけないことが多かったが,短報の重要性が増大してきたので,今後は研究速報の類には抄録をつけて情報処理の便をはかることが望ましい。
- 5.3 特許文献
- 特許権についてではなく,技術情報としての特許抄録の作成のしかたについて述べた。特許文献の書誌事項の記述については,科学技術情報流通技術基準SIST 02を参照されたい。
- 5.5 総説,展望,解説
- 多数の文献,資料等に基づく批判的レビューで,著者の意見が明確に打ち出されているものには,報知的抄録が望ましい。単に文献,資料をまとめたものは指示的抄録でよい。
- 5.6 紹介記事
- 新製品・展示会の紹介,団体・機関の概要紹介,団体・機関の活動報告,会議出席報告などで,一般に短い記事なので,指示的抄録でよい。
対応国際規格: ISO 214 DocumentationーAbstracts for publications and documentation
関連基準・規格: SIST 02 参照文献の書き方
JIS Z 8201 数学記号
JIS Z 8202 量記号,単位記号及び化学記号
JIS Z 8203 国際単位系(SI)及びその使い方
ISO 1000 SI units and recommendations for the use of their multiples and of certain other units