科学技術情報流通技術基準

学術論文の構成とその要素 解説




〔本基準制定の目的とその経緯]

 本基準は,学術雑誌に掲載される学術論文を対象とし,執筆者が論文を作成する際の指針を,情報流通の観点から必要事項をとりあげて示したものである。先に制定されたSIST 07「学術雑誌の構成とその要素」は学術雑誌の編集者が,雑誌を発行する際の指針として作られたが,本基準はこれと対をなすものである。
 学術雑誌の編集者は,投稿規定又は執筆要領の作成に際し,本基準を役立てていただきたい。同時に,将来執筆者となり得る学生に対する,論文執筆要領の指導・教育に際しては,可能な限り,本基準に準拠されることを願うものである。
 本基準の作成にあたっては,我が国における情報流通の特殊性から,日本語論文と外国語論文の両者について検討を加えた。情報流通を促進するためには,論文の二次資料化が必要であり,外国語論文の日本語による二次資料化を考慮すると同時に,我が国で執筆された学術論文が海外で二次資料化され,国際的に流通することをも考慮したものである。このため.本基準は,可能な限り我が国の状況を勘案しつつ,対応若しくは関連するISO規格との整合性を図った。ただし,本基準の一部に,我が国の学術論文刊行の実態に鑑み,我が国の特殊性を残した箇所もある。
 本基準は,昭和59年3月に策定された基準案について見直しを行ったうえ,一部修正したものであり,昭和61年3月に「基準」として制定された。
 なお,2.の用語の意味において付記した英語は,参考のためであって,基準の一部とはしない。
(以下の番号は,本基準の中の見出しの番号に対応する。)

1. 適用範囲

 本基準は,主として学術雑誌に掲載される原著論文を主体とした学術論文を対象として作成したが,総説,レビューについても配慮したので本基準を準用されたい。また,自然科学の分野における学術論文についての指針であるが,社会科学の分野における論文に対しても十分適用することができる。
 なお,本基準でいう学術論文とは,印刷物として発行される雑誌に掲載されるものを指す。今後,印刷物によらない論文の流通の発達が予想されるが,現時点では,未だ流動的な部分も多く,本基準に取り入れるのは時期尚早と考え,対象を印刷物形式の学術論文に限定した。

3.2 既に発表された内容を含む論文

 ここでいう「既に発表された内容を含む論文」とは,同一著者が,正規の学術論文の体裁をとらずに発表した論文の内容を,あらためて,原著論文の形式で発表する場合等のことを指すものであり,いわゆる「二重投稿」を指すものではない。

4. 論文の構成要素

 検討の対象とした論文の構成要素は4章に示したとおりであり,その配列は,おおよそここに記載した順序である。
 印刷された論文の第1ページ及び最終ページは,情報流通にとって重要な要素を含んでいるので,日本語論文の例を付図1〜4に示した。
 情報検索の鍵として,分類記号を論文に付与している学会がある。その場合,雑誌の編集者が付与することになる。主として論文の著者を対象とする本基準では,分類記号は論文の構成要素としてはとりあげなかったが,記載するとすれば,例示したような位置になろう。
 本基準では,論文の本体と図・表を含めて本文とした。本文は通常,
  1.序論(理由,レビューを含む)
  2.材料及び方法
  3.結果
  4.評価・検討
     ・
     ・
     ・
     ・
     ・

という順序で記述されるが,本基準の対象とする専門分野は,範囲が広く,長年にわたり,多様な習慣が確立している場合も多く,専門分野によっては,本基準に統一することが,混乱を防止するという面で,必ずしも適当とはいえないため,本文の構成要素やその記述順序については,あえて規定しなかった。
 内容目次,付録は,必要に応じて付けることができる。

5.2 著者名

 研究の実行と論文の執筆にあたって責任を持つのが著者である。また,情報流通の面からは著者名は検索及び識別の際の重要な鍵である。最近の傾向として,研究は大型となり,しかも共同研究が多くなったため,研究に関係する人も多くなる傾向にあるが,論文の著者として,共著者の数は必要最小限にとどめ,研究の協力者は共著者とはせず,謝辞の中に記載するのが適当であろう。
 外国語による著者名の記述方式は,国によりまた専門分野により,多くの方法があり,一つの方式に決めかねたが,姓と名を明確に区別する方法としては,姓の文字のすべてを大文字で記述する方法が考えられるので,これを推奨する。

例:
SASAKI Taro,MINATO Hiroko,and HONGO Bunzo

 また,複数の著者名の記載順序については,二次資料作成にあたって,スペースや記憶容量の関係から,後の方に記載された著者名が省略されてしまう可能性もあるため,研究の遂行にあたって,寄与するところの大きい順に記載することが望ましいが,研究機関によっては,組織上の慣例から,必ずしもそのように記載することができない場合も多く,この基準では,順序並びに数を規定しなかった,しかし,複数の著者の記載順序については,研究の遂行並びに論文の執筆に主体的に参加した程度の順に列記することが強く要請される。
 また,結婚等によって改姓した著者の表示方法については,慣例,法律上の規定とその将来の方向等を勘案し,本基準で規定することはあえて見送った。検索や識別の観点からは,新姓と名前の間に,旧姓を括弧書きにして挿入する等の方式が考えられる。

例:
本郷(田中)花子

5.3 著者の所属機関等

 著者の地位,身分,称号は原則として省くが,学生,大学院生の場合は.連絡先(電話,郵便等)を確保する という観点から,その旨を記載することが望ましい。
 印刷された論文の第1ページ,最終ページ又は雑誌の最後に「著者紹介」として,著者の略歴,地位,身分,称号等を掲載している雑誌もある。情報提供の一方法と考えられる。

5.4 抄録

 抄録の位置は,4章に示した構成要素の順に従うことが望ましい。抄録作成の詳細はSIST 01を参照されたい。

5.5 キーワード

 情報流通の促進を考え,各論文にキーワードを付与する傾向が急速に広まりつつある。情報検索の効率を考えると,研究内容に一番詳しい著者が,まず必要と考えられるキーワードを付与することが望ましい。ただし,著者の付与したキーワードが不適切又は不十分な場合には,これを編集者が手直しをするか,付加することが望まれる。

5.6.2 用字用語・記号等

 外国語論文で用いる用字用語については,各専門分野の代表的な投稿規定などに従って,各雑誌で規定することが望ましい。生物科学分野を例にとれば,

  Council of Editors Style Manual. 4th ed. CBE Style Manual Committee. 1978. 265p.

に準ずるのが適当であろう。

 なお,JIS Z 8301「規格票の様式」の用字用語に関連する規定については,参考を参照されたい。

5.6.3 見出しの番号付け

 本文の見出しの区分は,ポイントシステムによるが,本基準で対象とした学術論文においては,区分の必要性を考え,章(chapter),節(section),項(clause)の第3レベルで止めることにした。
 項以下の区分その他必要と考えられる番号付けは,それぞれの投稿規定等で指示することになる。

5.6.4 図・写真・表の番号付け

 図・表等は印刷が完成した段階で,読者に理解しやすいことを配慮し,該当する本文の近くに掲載することが望ましい。大きな図・表を横にして掲載する場合には,図・表の天が偶数ページにおいてはページの外側に,奇数ページにおいてはページの内側になるように掲載することを考慮した番号付けを行う。

5.7 脚注

 脚注は,著者の所属機関の変更,既発表の論文に関する情報等必要最小限にとどめ,本文中の語句又は内容に関する説明等は,可能な限り本文の中で行い,脚注として記載することを避けることが望ましい。しかし,必要となった場合には,本基準に従って記載する。

5.9 参照文献

 参照文献は脚注とはせず,本文中の末尾にまとめて記載することとした。 本文の中で,参照文献を出現順に一連番号を付けて指示する方法をとった場合,同じ文献を再度指示するときは,同一の番号で指示する。
 参照文献として私信,非公開又は一般に入手しにくい文献(投稿中の論文,出願中の特許は除く)をあげることはできる限り避けることが望ましい。ただし,表示する必要がある場合は,SIST 02の規定に従って記載する。

5.10 柱(ランニングタイトル又はランニングヘッド)

 柱としての表示内容は,投稿規定に従って著者が作成することを原則とする。投稿規定に定めのない場合は,その雑誌の編集者がSIST 07に従って作成する。

付記1.内容目次

 読者の便宜を図るために,特に長い論文の場合,本文の前に内容目次を挿入してもよい。内容目次には,番号及び見出しを明記する。

付記2.付録

 読者の便宜を図るために,参照文献の後に,付録を付けることができる。本基準ではannexと訳したが,appendixと呼ぶ場合もある。



対応国際規格: ISO 215  Documentation-Presentation of contributions to periodicals and other serials

関連基準・規格:
SIST 01 抄録作成

SIST 02 参照文献の書き方

SIST 07 学術雑誌の構成とその要素

JIS Z 8201 数学記号

JIS Z 8202 量記号,単位記号及び化学記号

JIS Z 8203 国際単位系(SI)及びその使い方

JIS Z 8301 規格票の様式

ISO 8    Documentation-Presentation of periodicals

ISO 18   Documentation-Contents list of periodicals

ISO 31/0  General principles concerning quantities,units and symbols

ISO 214  Documentation-Abstracts for publications and documentation

ISO 690  Documentation-Bibliographic references-Content,form and structure

ISO 1000  SI units and recommendations for the use of their multiples and of certain other units

ISO 8601  Data elements and interchange formats-Information interchange-Representation of data and times


SIST 08の目次へSIST トップページへ